『Trainspotting(トレインスポッティング)』公開30周年:90年代の魂が、再びスクリーンで暴れ出す

1996年、エディンバラの路地裏を全力疾走する若者たちの姿は、世界中の若者の心に消えない火を灯した。公開30周年を迎える今、再びこの「最悪で最高」な物語を日本のスクリーンに戻ってくる。

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目次

『トレインスポッティング』とは

アーヴィン・ウェルシュの同名小説をダニー・ボイルが映画化した本作は、スコットランドのエディンバラを舞台に、ヘロイン中毒の若者たちの日常を冷徹かつポップに描いている。主人公レントンが突きつける「人生を選べ(Choose Life)」という問いかけと、それに対する強烈な皮肉は、当時の閉塞感に対する回答でもあった。汚物の中に潜るシーンや天井を這う赤ん坊など、ドラッグの陶酔と恐怖を視覚化した斬新な演出は、今なお革新的な映像美として語り継がれている。

当時のイギリスにおける熱狂:ブリットカルチャーの最高到達点

1996年当時のイギリスは「クール・ブリタニア(Cool Britannia)」の絶頂期にあり、オアシスやブラーといったブリットポップの隆盛と呼応するように、この映画は単なる作品の枠を超えた社会現象となった。

当時、ガーディアン紙の著名な映画批評家デレク・マルコム(Derek Malcolm)は、1996年2月22日付のレビューで本作を「extraordinary achievement and a breakthrough British film(驚異的な達成であり、イギリス映画の突破口/躍進である)」と評した。また、NMEは本作について、単なる映画レビューの枠を超え、「The movie of a generation(世代の映画)」「Soundtrack of your life(君たちの人生のサントラ)」といったニュアンスで絶賛した。

一方で、ドラッグを美化しているという保守層からの批判も噴出した。1996年の米大統領選候補者であった共和党のボブ・ドール(Bob Dole)は公開当時、本作を観る前であったにもかかわらず、映画が「ドラッグ使用に魅力的な光を当てている」と名指しで批判した。これがかえって、既存の価値観に反発する若者たちの間でカリスマ的な人気を決定づける要因となった。

また、ダニー・ボイル監督や脚本家のジョン・ホッジは、数々のインタビューで「映画はドラッグの快楽だけでなく、その代償としての凄惨な現実(禁断症状や仲間の死)を逃げずに描いている」と反論している。

日本を席巻した「トレスポ」旋風

1996年の日本公開時、ミニシアターの聖地であった渋谷シネマライズを中心に、本作は33週という異例のロングランを記録した。映画そのものだけでなく、ポスターのデザインやライフスタイルを含めた「ファッション」として、日本の若者に熱狂的に迎え入れられたのが特徴である。当時の裏原宿カルチャーやクラブシーンと密接に結びつき、日本のユースカルチャーにも多大な影響を与えた。

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音楽とファッション:業界を塗り替えた美学

本作が今なお色褪せない理由には、登場人物のファッションと劇中の音楽の圧倒的なセンスにある。アンダーワールドの「Born Slippy (Nuxx)」は、イントロが流れるだけで当時の高揚感を呼び覚ますアンセムとなった。イギー・ポップやルー・リード、ブライアン・イーノといったレジェンドから、エラスティカのような当時の新鋭までを網羅したサウンドトラックは、映画史に残る傑作である。

特にこれらレジェンドの楽曲は、単なるBGMを超えた役割を担っている。映画の冒頭、レントンの疾走とともに流れるイギー・ポップの「Lust for Life」は、1970年代からドラッグ・カルチャーを体現してきた彼の荒々しいエネルギーを借りて、若者たちの初期衝動を爆発させた。また、レントンが過剰摂取で意識を沈ませるシーンでは、ルー・リードの「Perfect Day」が、多幸感と絶望の境界線を美しく残酷に描き出した。さらに、ブライアン・イーノの静謐なアンビエント曲「Deep Blue Day」が、映画史上最も不潔とされるトイレのシーンを幻想的な冒険へと昇華させた事実は、監督ダニー・ボイルの類稀なる選曲センスの証明といえる。

こうした音楽体験と表裏一体となっていたのが、視覚的なファッションスタイルである。レントンのチビTやタイトなスキニーデニム、足元の「アディダス・ガゼル」といったスタイリングは、当時のファッション界で「ヘロイン・シック」という一大潮流を巻き起こした。

ヘロイン・シックとは

「ヘロイン・シック(Heroin Chic)」とは、1990年代半ばから後半にかけて、ファッション界や広告表現を支配した独特の美学のことを指す。それまでの80年代を象徴する、健康的で筋肉質なスーパーモデルへのアンチテーゼとして登場した。

このスタイルは、不健康なまでの痩せ型、青白い肌、目の周りのくま、虚ろな表情、無造作な髪といった「薬物中毒者」を連想させる退廃的なルックスが最大の特徴である。ケイト・モスがそのアイコンとして語られることが多く、当時のモード誌は美の定義を「強さ」から「脆弱さ」へと塗り替えた。

『トレインスポッティング』において、レントンたちが身に纏っていたタイトなシルエットや着古した古着のスタイルは、このヘロイン・シックの美学と完全に共鳴していた。単なる中毒者の描写を超え、彼らのルックスが「クールでスタイリッシュなもの」として若者に受容された背景には、この時代のファッション・トレンドが強く影響している。

30周年リバイバル:日本での再上映

30年の時を経て、再びあの衝撃が日本に帰ってくる。全国のミニシアターを中心にデジタルリマスター版によるリバイバル上映が決定しており、当時の興奮を知る世代はもちろん、配信でしか観たことがない世代にとっても大きなスクリーンで体験する貴重な機会となる。また、30周年を記念した限定アパレル、復刻デザインのポスターを販売するポップアップストアの開催も予定されている。

CCC Presents 1996 : Trainspotting 30th Anniversary

このリバイバル上映を記念し、2026年1月31日に渋谷・Spotify O-EASTにてスペシャルイベント「CCC Presents 1996 : Trainspotting 30th Anniversary」が開催される。東京のクラブシーンを牽引するコレクティブ「CCC」のキュレーションのもと、Albino Sound、Mars89、7eといった先鋭的なアーティストが集結し、90年代のUK音楽カルチャーを現代の解釈で再構築する一夜となる。

概要

公開情報

  • 公開日:2026年1月30日(金)より2週間限定
  • 公開劇場:全国89館(公開劇場は順次追加予定です)
  • レイティング:R15+
  • 料金:1,600円均一(各種サービスデーや他の割引サービスはご利用いただけません)
  • ※公開劇場は順次追加予定。公式X(@Filmarks_ticket)でお知らせいたします。
  • ※劇場により、上映日・上映期間が異なります。
  • 配給:アスミック・エース、Filmarks
  • 公開劇場
    • [北海道]札幌シネマフロンティア、サツゲキ
    • [青森]イオンシネマ新青森(2/6〜)
    • [宮城]MOVIX仙台、109シネマズ富谷
    • [秋田]AL☆VEシアター supported by 109シネマズ
    • [茨城]MOVIXつくば、イオンシネマ守谷
    • [栃木]MOVIX宇都宮
    • [群馬]イオンシネマ高崎
    • [埼玉]MOVIXさいたま、MOVIX川口、イオンシネマ浦和美園、イオンシネマ春日部、シネプレックス幸手、ユナイテッド・シネマ入間、川越スカラ座(1/31〜)、深谷シネマ(2/1〜)、OttO(3/6〜)
    • [千葉]ユナイテッド・シネマ幕張、キネマ旬報シアター(1/31〜)、シネマイクスピアリ、イオンシネマ市川妙典(2/6〜)
    • [東京]新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、池袋HUMAXシネマズ、MOVIX亀有、109シネマズ二子玉川、Stranger(2/6〜)、キネカ大森、イオンシネマ板橋、イオンシネマ シアタス調布(2/6〜)、MOVIX昭島、アップリンク吉祥寺、新文芸坐(2/24~28)、シネマリス(日程未定)
    • [神奈川]ムービル、イオンシネマ港北ニュータウン、109シネマズ川崎、イオンシネマ新百合ヶ丘(2/6〜)、横須賀HUMAXシネマズ、イオンシネマ座間、MOVIX橋本、ローソン・ユナイテッドシネマ STYLE-S みなとみらい、シネコヤ(2/5〜)
    • [新潟]ユナイテッド・シネマ新潟
    • [富山]ほとり座(2/21〜2/28)
    • [石川]イオンシネマ白山
    • [長野]イオンシネマ松本(2/6〜)
    • [岐阜]イオンシネマ各務原、イオンシネマ土岐(2/6〜)
    • [静岡]静岡シネ・ギャラリー(2/13~)
    • [愛知]ミッドランドスクエア シネマ、センチュリーシネマ、イオンシネマ名古屋茶屋、シネマワールド ららぽーと安城、ユナイテッド・シネマ豊橋18、ミッドランドシネマ名古屋空港、イオンシネマ長久手、イオンシネマ大高(2/6〜)
    • [三重]109シネマズ四日市
    • [京都]MOVIX京都、出町座、イオンシネマ京都桂川
    • [大阪]なんばパークスシネマ、テアトル梅田、イオンシネマ シアタス心斎橋、イオンシネマ茨木、イオンシネマ四條畷、MOVIX八尾
    • [兵庫]塚口サンサン劇場、イオンシネマ加古川(2/6〜)、元町映画館(2/7〜)
    • [岡山]イオンシネマ岡山
    • [広島]サロンシネマ、シネマ尾道(1/31〜)
    • [山口]MOVIX周南
    • [香川]イオンシネマ宇多津(2/6〜)
    • [福岡]KBCシネマ、小倉コロナシネマワールド、イオンシネマ大野城(2/6〜)
    • [佐賀]シアター・シエマ
    • [長崎]シネマボックス太陽
    • [熊本]熊本ピカデリー
    • [大分]大分シネマ5(1/31〜)
    • [宮崎]宮崎キネマ館
    • [鹿児島]ガーデンズシネマ
    • [沖縄]シネマパレット、シネマプラザハウス1954(2/13〜)

イベント情報

  • イベント名:CCC Presents 1996 : Trainspotting 30th Anniversary
  • 開催日:2026年1月31日(土)23:30 〜 29:00
  • 会場:Spotify O-EAST 3F、東間屋(東京都渋谷区道玄坂2-14-8)
  • ラインナップ(第1弾):
    • <O-EAST 3F>
      • Albino Sound (Hybrid set)
      • arow
      • Mars89
      • TEI TEI
      • 7e
    • <東間屋>
      • K8
      • m-int
      • ykah
    • DECORATION
      • YA3i (Ichika + cos.)
    • VJ
      • 刀匠
  • チケット販売(前売り):
    • 前売り:¥3,000
    • 一般:¥3,500 ※U30:¥2,500 (30歳以下/入場時に要身分証提示)
    • 販売期間:2026/1/6(火) 18:00 ~ 2026/1/31(土) 21:00
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