イギリスのカジュアルズとは?歴史・ファッション・カルチャーを徹底解説

目次

イギリスのカジュアルズとは?

Casuals(カジュアルズ)は、1970年代後半から1980年代にかけてイギリスのフットボールファン(または、フーリガン)を中心に広まったサブカルチャー。彼らは、試合の日に高級ブランドの服を着てスタジアムに集まり、対立するクラブのファンと衝突することも多かったことで知られている。本記事では、カジュアルズの特徴を「文化」「ファッション」「歴史」に分けて解説する。

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文化(Culture)

カジュアルズの文化は、フットボール(サッカー)とストリートファッションが深く結びついている。従来のフーリガン文化と異なり、チームのユニフォームではなく、ブランド物の服を身に着けることがステータスとなっている。

文化の主な特徴

  • フットボールとの結びつき
    • 試合観戦とセットでファッションを楽しむ
    • チームカラーを前面に出さず、敵対するファンに紛れ込む戦略
  • ギャング的要素
    • スタジアム周辺での抗争や、クラブごとにグループを形成
  • 旅行とブランドハンティング
    • ヨーロッパ遠征の際に現地で流行しているブランドを発見し、イギリスに持ち帰る

ファッション(Fashion)

カジュアルズのファッションは、スポーツブランドと高級ブランドのミックスが特徴的。クラブのユニフォームやスカーフではなく、洗練された服装でスタジアムに集まるのがスタイル。これにより、警察の目を逃れやすくなり、対立するファンとの抗争でも優位に立てるという戦略的な側面もあった。また、彼らは、サッカーの遠征などを通じてヨーロッパのブランドを知り、それを取り入れることで他のフーリガンとは違うスタイルを確立。

主なブランドとアイテム

  • イタリア
    • Stone Island(ストーンアイランド)– カジュアルズの象徴的ブランド
    • C.P. Company(C.P.カンパニー)– 特にゴーグル付きのジャケットが人気
    • Sergio Tacchini(セルジオ・タッキーニ)– スポーティーなトラックスーツが流行
    • Fila(フィラ)– スポーティーなトラックスーツが流行
  • フランス
    • Lacoste(ラコステ)– ポロシャツやニットが人気
  • イギリス
    • Fred Perry(フレッド・ペリー)– モッズ文化と融合し、クラシックなポロシャツが定番
    • Umbro(アンブロ)
  • シューズ
    • Adidas(アディダス)– スニーカー(ガゼル、ハンブルク、トリミスターなど)が定番

カジュアルズの特徴的なスタイル

  • スポーツブランドのトラックジャケットやポロシャツ
  • 高級ブランドのジャケット(特にStone Islandのバッジ付きジャケット)
  • スリムなジーンズやチノパン
  • アディダスのスニーカー

このファッションは、現在のストリートファッションにも影響を与えている。

歴史(History)

1970年代後半 – 誕生

  • フットボールフーリガン文化が活発化
  • リヴァプールのサポーターがヨーロッパ遠征で高級ブランドを持ち帰り、カジュアルズのスタイルが誕生

1980年代 – 全盛期

  • イギリス全土のクラブでカジュアルズが拡大
  • メディアが「フーリガンの新たなスタイル」として報道
  • 各クラブのフーリガン集団がファッションを競い合うようになる
  • 1985年のヘイゼルの悲劇(フーリガン暴動で39人死亡)をきっかけに、警察の取り締まりが強化

1990年代以降 – 商業化と進化

  • カジュアルズスタイルがストリートファッションとして認知される
  • Stone IslandやC.P. Companyが一般の若者にも人気に
  • フーリガン要素は減少し、ファッションとしての側面が強まる

パブとの密接な繋がり

イギリスのフットボールファンにとって、試合の前後にパブで酒を飲むのは伝統的な習慣。カジュアルズも例外ではなく、彼らは試合の日にパブを拠点として集まり、情報交換を行い、仲間と結束を深める場として利用した。

パブでのカジュアルズの特徴

  • 試合前の集合場所
    • それぞれのクラブのカジュアルズが、地元のパブを拠点にすることが多かった。
    • 対戦相手のファンと鉢合わせすると、乱闘が起こることも。
  • ファッションを誇示する場
    • パブでは、カジュアルズたちが最新のブランド(Stone Island、Lacosteなど)を身につけ、互いにチェックする場にもなった。
  • 情報交換と戦略会議
    • 試合前に「どのルートでスタジアムに行くか」「どのエリアで相手のカジュアルズとぶつかるか」などの計画が立てられることも。

カジュアルズが集まるパブの例(ロンドン)

  • The Blind Beggar(ブラインド・ベガー) – フーリガン文化とも関係が深い伝説的パブ
  • The Green Man(グリーン・マン) – ウェンブリー・スタジアム近くの有名なサポーターの集まるパブ

現代では、カジュアルズの暴力的な側面は減少したが、フットボールファンが試合前にパブで過ごす文化は今も健在。

関係が深い音楽ジャンル

カジュアルズは音楽シーンにも大きな影響を受け、また逆に影響を与えている。彼らが好んだ音楽のジャンルには、モッズ、ニューウェーブ、マッドチェスター、ブリットポップ、ハウスミュージックなどが挙げられる。

① モッズ(Mods)とノーザン・ソウル(Northern Soul)

  • カジュアルズは1970年代後半にモッズの影響を受けたスタイルを取り入れていた。
  • Fred PerryやLacosteなどのブランドは、モッズのファッションと共通点が多い。
  • ノーザン・ソウル(アメリカのソウルミュージックを中心としたダンスシーン)も一部のカジュアルズに人気だった。

② マッドチェスター(Madchester)とインディーロック

  • 1980年代後半〜1990年代初頭、マンチェスターの音楽シーン(マッドチェスター)がカジュアルズ文化と融合。
  • 代表的なバンド:The Stone Roses、Happy Mondays、The Charlatans
  • カジュアルズは、この音楽とともにクラブカルチャーに入り、エクスタシー(MDMA)を使用するシーンとも結びついた。

③ ブリットポップ(Britpop)

  • 1990年代のブリットポップ(OasisやBlur)が流行したとき、カジュアルズのファッションスタイルが再び注目された。
  • Oasisのリアム・ギャラガーは、現在もカジュアルズのスタイルを体現するアイコン的存在。
  • Stone IslandやAdidasのスニーカーを愛用し、多くのファンが影響を受けた。

④ ハウス&レイヴカルチャー

  • 1980年代後半のアシッドハウス・レイヴシーンは、カジュアルズと結びつき、フットボールファンの一部がクラブミュージックに傾倒した。
  • クラブカルチャーとカジュアルズが交差し、ファッションやライフスタイルにも影響を与えた。

【その他記事】イギリスの都市マンチェスターを中心に起こった音楽のムーヴメント「Madchester(マッドチェスター)」の歴史を解説!

ロンドンの主要クラブとカジュアルズグループ

① チェルシー(Chelsea FC) – Headhunters

  • Headhunters(ヘッドハンターズ)は、チェルシーの有名なフーリガングループ。
  • カジュアルズスタイルの代表的存在で、Stone Island、C.P. Company、Lacoste、Adidasを多用。
  • ロンドンの西部エリア(キングス・ロード周辺)を拠点にしていた。
  • スタジアム周辺のパブ(The Butcher’s Hookなど)が溜まり場だった。

② ウェストハム(West Ham United) – Inter City Firm(ICF)

  • ICF(インター・シティ・ファーム)は、イギリスのフーリガン史の中でも最も悪名高いグループの一つ。
  • カジュアルズファッションにこだわり、LacosteやSergio Tacchiniを着用。
  • 「Green Street Hooligans(グリーン・ストリート・フーリガンズ)」という映画にも描かれた。
  • パブ「The Boleyn」や「The Black Lion」が主要な集まりの場だった。

③ アーセナル(Arsenal FC) – The Gooners

  • カジュアルズの影響を受けたフーリガングループ「The Gooners(グーナーズ)」が存在。
  • Stone IslandやFila、Fred Perryなどのブランドを愛用。
  • ハイベリーや現在のエミレーツ・スタジアム周辺のパブ「The Tollington Arms」が拠点だった。

④ トッテナム・ホットスパー(Tottenham Hotspur) – Yid Army

  • 「Yid Army(イッド・アーミー)」は、トッテナムの熱狂的なサポーターグループ。
  • カジュアルズスタイルを取り入れつつ、スキンヘッズ文化とも関係があった。
  • Stone IslandやAquascutumのコートを好む傾向があった。
  • パブ「The Bricklayers Arms」や「The Beehive」が拠点だった。

カジュアルズと日本の関係

イギリス発祥のカジュアルズ文化は、日本でもファッションやサブカルチャーを通じて影響を与えてきた。日本におけるカジュアルズの受容は、ストリートファッション、フットボール文化、音楽、ブランドブームなどを通じて広がっている。

日本のストリートファッションとカジュアルズ

1990年代~2000年代:カジュアルズブランドの流行

  • 1990年代後半から2000年代初頭にかけて、日本のストリートファッションシーンでは、Stone Island(ストーンアイランド)やC.P. Company(C.P.カンパニー)といったカジュアルズの定番ブランドが人気を集めた。
  • これは、裏原宿系ファッション(A Bathing Ape、Goodenoughなど)やセレクトショップ(BEAMS、UNITED ARROWS)で取り扱われたことが影響している。
  • 藤原ヒロシなどの日本のファッションアイコンが、カジュアルズ系ブランドを取り入れたことで、カジュアルズのスタイルが一部のファッション好きの間で注目された。

現代のストリートファッションとの融合

  • 現在、日本のストリートシーンでは、カジュアルズファッションはSupreme、Palace、Nikeなどのストリートブランドとミックスされることが多い。
  • Stone IslandやC.P. Companyは、海外のセレブやアーティストの影響で再評価され、日本のファッション業界でも定番ブランドとしての地位を確立している。

日本のフットボールファンの欧州クラブ観戦

  • 日本のフットボールファンの間では、プレミアリーグやセリエAなどの海外サッカーが人気。
  • イギリスのスタジアム文化やファッションをリスペクトする一部のファンが、カジュアルズスタイルを取り入れるようになった。
  • リヴァプールやマンチェスター・ユナイテッドのファンの中には、イギリスのカジュアルズファッションを参考にしている人もいる。

まとめ

カジュアルズは、単なるフーリガン文化ではなく、フットボールとファッションが融合した独自のサブカルチャー。彼らのファッションは、現在のストリートウェアにも影響を与えており、特にStone Islandなどのブランドは今も絶大な人気を誇る。

今では「カジュアルズ=暴力的」ではなく、ファッションの一つとして認識されることが多くなっている。

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