【ジェームス・マーフィーとLCDサウンドシステム】ニューヨーク発のダンスパンクについて

ジェームス・マーフィーという男は、「バンドのフロントマン」以外の側面も強烈に持ち合わせている。2000年代以降、LCDサウンドシステム(LCD Soundsystem)の中心メンバーとして、そして自身のレーベル「DFA Records」を通じてニューヨークの音楽地図を塗り替えた彼は、今やプロデューサー、実業家、そして都市文化のキュレーターとして存在感を放っている。

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LCDサウンドシステムという「個」の投影

2002年にニューヨーク・ブルックリンでジェームス・マーフィー(James Murphy)を中心に結成されたプロジェクト、それがLCDサウンドシステム(LCD Soundsystem)。パンクの衝動とエレクトロニック・ミュージックを融合させた「ダンス・パンク」というジャンルを定義づけた存在である。自身のレーベル「DFA Records」からリリースされた『Losing My Edge』で鮮烈なデビューを飾り、2000年代のインディー・ミュージック・シーンにおける最重要バンドの一つとして、いまなお君臨している。

2018年Sonar Festivalに出演するジェームス・マーフィー

本場アメリカでの圧倒的な人気

本場アメリカにおいて、ジェームス・マーフィーは一種の「知的なカリスマ」としての地位を確立している。彼が率いるLCDサウンドシステムは、数々のグラミー賞ノミネートに加え、2011年にはマディソン・スクエア・ガーデンでの解散ライブを瞬く間に完売させるという伝説を打ち立てた。その支持は、もはやカルト的な熱狂を帯びていると言っても過言ではない。大衆的な人気を博しながらも、常に批評的な視点を失わない彼のスタンスは、ファンのみならずメディアからも絶大な信頼を集めている。コーチェラをはじめとする巨大フェスのヘッドライナーを務める実力を備え、ダンスフロアをロックする唯一無二のライブバンドとしての地位は、今なお揺るぎないものだ。

2016年のCoachellaに出演するLCD Soundsystem

多才なジェームス・マーフィー:生粋のニューヨーカー

ジェームス・マーフィーを語る上で、ミュージシャンという肩書きだけでは足りない。彼はアーケイド・ファイアの『Reflektor』を手がける辣腕プロデューサーであり、DFA Recordsを率いる経営者であり、さらにはブルックリンでミシュラン一つ星のワインバー「The Four Horsemen」を営むオーナーでもある。ニュージャージー出身ではあるが、そのキャリアと感性は完全にニューヨークに根ざしている。

また、音響への異常なまでのこだわりは有名で、ヴィンテージ機材への造詣も深い。地下鉄の改札音を音楽的に改良しようとする「Subway Symphony」プロジェクトを提案するなど、街そのものに対する深い愛着と鋭い批評精神を併せ持っている。

The Four Horsemenの店内の様子

The Four Horsemen
295 Grand St, Brooklyn, NY
https://www.fourhorsemenbk.com/

毎年恒例、年末のニューヨークでのライブ

ファンにとっての年中行事となっているのが、毎年年末にニューヨークで開催される「ライブ」である。近年はブルックリンの「Brooklyn Steel」やクイーンズの「Knockdown Center」を拠点とし、10公演から20公演近くを数週間にわたって開催するのが恒例となっている。これは単なるコンサートではなく、DFA Recordsのスワップミート(フリーマーケット)やアフターパーティーが併設されることもあり、ニューヨークのクリエイティブ・コミュニティが集結する巨大な忘年会のような盛り上がりを見せる。

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「New York I Love You but You’re Bringing Me Down」に込められた思い

代表曲『New York I Love You but You’re Bringing Me Down』は、彼が愛してやまない街への、あまりにも美しく、そして痛烈な告白である。かつてルー・リードやアンディ・ウォーホルがいた「荒々しく、刺激的で、安価だったニューヨーク」が、再開発や富裕層の流入(ジェントリフィケーション)によって清潔で高価な街へと変貌してしまったことへの失望が綴られている。「愛しているが、お前にはがっかりさせられる」という歌詞は、変わりゆく街の姿に疎外感を感じながらも、そこを離れることができない生粋のニューヨーカーの孤独と執着を象徴している。

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