映画ファンから圧倒的な支持を受けるイギリスの監督、エドガー・ライト。そして彼と共に独自のユーモアと感動を描いてきた盟友、サイモン・ペッグ。二人の作品は、ただのコメディやアクションにとどまらず、“映画愛”と“人間ドラマ”が詰まった傑作ばかり。今回は、彼らの関係性と代表作を深掘りし、なぜこれほどまでに人気なのかを探っていく。

エドガー・ライトとは?
エドガー・ライトは1974年にイギリスで生まれた映画監督で、脚本家やプロデューサーとしても活動している。彼の作品の特徴は、なんといっても独自の映像表現。音楽と映像編集のリズムを完璧にシンクロさせるスタイルで知られており、世界中の映画ファンから熱い支持を受けている。代表作には『ショーン・オブ・ザ・デッド』や『ホット・ファズ』『ベイビー・ドライバー』などがあり、いずれもジャンルを横断するユニークな作品ばかり。
エドガー・ライト作品の大きな特徴は、音楽とのシンクロ性にある。特に2017年の『ベイビー・ドライバー』では、全編がサウンドトラックに合わせて緻密に編集され、まるでアクション版ミュージカルとも言える独創的な映像美を実現した。テンポの良いカット割り、音楽と効果音の融合、ビジュアルジョークを駆使した演出が特徴的。
『スコット・ピルグリム vs. 邪悪な元カレ軍団』(2010)では、カナダのグラフィックノベルを原作に、ゲーム・アニメ・音楽と映画の融合を大胆に試み、カルト的な人気を獲得。『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)では一転してホラー&スリラーへ。ビジュアルと心理描写を軸にした新境地に挑戦し、多才さを見せつけた。そして2020年代、ライトは再び原点とも言えるサイモン・ペッグとのコラボ新作を準備中と報じられている。過去作の続編やスピンオフとは違う、新たな挑戦が期待されている。
エドガー・ライトはインタビューでたびたび「映画はすべての芸術が合流する場所」と語っている。その言葉どおり、彼の映画には映画史への敬意と新しい時代へのチャレンジ精神が同居している。オタク的な知識と職人的な技術を持ち合わせながら、観客との距離感を大切にする稀有な映像作家。SNSでも頻繁に映画ネタを発信し、観客と直接つながる姿勢も彼の人気の秘密だ。
サイモン・ペッグとは?
サイモン・ペッグ(Simon Pegg)は、イギリス出身の俳優、コメディアン、脚本家であり、鋭いユーモアと親しみやすいキャラクターで世界中のファンを魅了している。映画・テレビ・ゲームと幅広いメディアで活躍する多才な人物。ただのコメディ俳優にとどまら図、2006年から出演している『ミッション:インポッシブル』シリーズでは、お調子者だが頼れる技術者ベンジー・ダンを好演。さらに、J・J・エイブラムスによる『スター・トレック』シリーズではスコッティ役としてSFファンにもその名を知られることとなる。また、映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』では、見た目では分からない特殊メイクの異星人キャラクター「Unkar Plutt」を演じるなど、変幻自在な役作りも話題を呼んだ。
サイモン・ペッグの魅力の源は、何よりも映画そのものを愛していることだ。彼の作品には、ホラーやSF、アクション、青春映画といったさまざまなジャンル映画へのオマージュが散りばめられており、どこか懐かしく、それでいて新しい。
脚本家としても優れた感性を持ち、物語構成の巧みさとセリフのテンポ感には定評がある。皮肉や風刺を交えつつも、登場人物たちに対する深い共感と人間味を描く力に、多くの人が魅了されている。
サイモン・ペッグとの出会いと“黄金タッグ”の誕生
ライトとペッグが出会ったのは1990年代末、イギリスのテレビ業界。意気投合した二人は、コメディドラマ『Spaced』で初めて本格的にタッグを組んだ。この作品では、ライトが監督を、ペッグが主演と脚本を担当。ポップカルチャーへの愛情が詰まったこのシットコムはカルト的な人気を博し、以後彼らは映画界でも共に歩んでいくことになる。

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スリー・フレーバー・コルネット三部作とは?
エドガー・ライトとサイモン・ペッグのコンビが生み出した代表作群が、いわゆる「スリー・フレーバー・コルネット三部作」。この三作はジャンルこそ違えど、それぞれが「大人になれない男」と「友情」というテーマを共有し、映画愛と深い人間描写が詰まった物語になっている。
第一作の『ショーン・オブ・ザ・デッド』(2004)は、ゾンビ映画とラブコメを融合させた一作。冴えない男ショーンがゾンビ発生に巻き込まれながらも、人間として成長していく姿が描かれている。

『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』(2007)は、バディアクション映画と田舎町のミステリー要素を組み合わせた作品。仕事一筋のエリート警官と、映画オタクの相棒警官が事件を通して絆を深めていく。

そして『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!』(2013)は、青春の記憶に縛られた中年男性たちが再会し、12軒のパブを巡りながら世界の終わりと向き合うという、SFとヒューマンドラマが融合した異色作。

二人の映画が人気の理由
エドガー・ライトとサイモン・ペッグの作品が人気を集めるのは、まず第一に、映画・音楽・ゲームといったポップカルチャーへの深い愛が根底にあるから。彼らの作品には過去の映画へのオマージュが多数登場するが、それは単なるパロディではなく、“敬意を持った再解釈”として描かれている。
また、ライトの映画には、音楽と映像が完璧に調和した編集が見られる。銃声や車のドリフト音さえも楽曲のリズムにぴたりと合っていて、観客の感情をリードするような映像美が際立つ。
さらに注目すべきは、ラブストーリーではなく“男同士の友情”を軸に物語が展開している点。サイモン・ペッグとニック・フロストのリアルな関係性もあって、作品に自然な温かさがにじみ出ている。
そして、笑いと涙が絶妙に入り混じる構成も魅力。一見バカバカしいストーリーの中に、現代を生きる我々が共感できるテーマや苦悩が巧みに描かれており、観終わった後に意外な感動が残るのが特徴。
“コルネット”に込められた遊び心
三部作には毎回、アイスクリーム「コルネット」が登場する。これはイギリスのお菓子で、各作品のテーマカラーやジャンルを象徴するフレーバーになっている。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』では赤(血)をイメージしたストロベリー味、『ホット・ファズ』では警察の制服に合わせた青=クラシック味、『ワールズ・エンド』ではエイリアンを思わせる緑=ミントチョコ味。このように、些細な小道具一つにも映画愛とユーモアが詰まっている。
“コルネット”それぞれの予告編
今後の展望と期待
エドガー・ライトとサイモン・ペッグは、ただの監督と俳優の関係を超えた、信頼と友情に基づく最高のコンビ。映画を心から愛する者同士が、それを全力で表現してきた結果、観る者の心を動かす作品が生まれてきた。今後の再タッグや新作にも大きな期待が寄せられており、彼らの創造力から目が離せない。